ECの業務改善を阻む商品データベースの課題 - 自動化と効率化のために必要な商品データ管理とは

ECを何年か運営していると、「かんたんな業務改善のつもりだったのに、思った以上に進まない」という場面に直面することがあります。

たとえば、

  • 商品SKUごとの利益率を正確に把握したい
  • 販売データを分析できる仕組みを入れたい
  • ショップのサイト内検索を改善したい

どれも一見すると、手軽に実現できそうに見えます。

しかし、いざ着手してみると、想像以上に時間やコストがかかり、途中でプロジェクトが止まってしまうケースは少なくありません。

その原因は、ツールやシステム選定ではなく、商品データベースの状態にあることが多いのです。

普段の受注処理や出荷業務が回っていると、「特に困っていないから問題ないはず」と感じがちです。しかし実際には、何かを変えようとした瞬間に初めて表面化する“見えない壁”がいくつも潜んでいることがあります。

この記事では、

  • 商品データベースにありがちな実務上の課題
  • なぜそれが日常業務では問題になりにくいのか
  • 改善や効率化を進めるために、どこから手を付けるべきか

といった点を、現場目線で整理していきます。

商品データベースのよくある課題

日常業務には特に支障がないものの、何かを改善しようとした途端に表面化しがちなのが、商品データベースの課題です。実際に、ECの様々な現場では、たとえば次のような状態がよく見られます。

《商品データベースによくある課題の例》

  • 商品名・型番・商品コードの表記揺れ
  • 同種の商品が、別物として登録されている
  • 商品情報が古いまま更新されていない
  • 同じ商品が、再入荷のたびに別の商品として登録されている
  • 商品コードに規則性がなく、不規則につけられている
  • 商品の特長を示すタグやカテゴリ分けに規則性がない
  • 「何のための項目かわからない」項目が増え続けている
  • 商品説明・画像・URLの不統一や欠落

こうした課題があっても、ECサイトのシステムがエラーを出すわけではなく、普段の受注処理や出荷業務自体は問題なく進んでしまいます。そのため、日常業務の中では、「少しデータが読みにくい」「管理しづらい気がする」と感じる程度で済んでしまいがちです。

しかし実際には、このような散らかった状態の商品データベースが、EC事業における業務改善や効率化を阻む、大きなボトルネックになっているケースは少なくありません。

なぜ「商品データベースの課題」が改善を阻むのか

たとえば、商品名や型番に表記揺れがあったり、同じ商品が「欠品 → 再入荷」のたびに別の商品コードで登録されていたりすると、「同じ商品を同じものとして特定できない」「違う商品を正確に区別できない」という問題が生じます。

商品知識のある担当者が見れば、「これは同じ商品」「これは別物」と判断できます。しかし、そうした前提知識がない人が見た場合、
データだけを見て明確に区別できない状態になってしまいます。

また、商品コードやカテゴリ、タグ付けに規則性がないと、「同じ特徴を持つ商品だけを絞り込む」といった処理ができません。
その結果、

  • 同種の商品を一括で値引きする
  • 特定条件の商品だけを対象に施策を打つ

といった自動化・効率化が難しくなります。ショップ内検索の仕組みも同様で、条件検索や並び順制御がうまく機能せず、「思ったように使えない」という状態に陥りがちです。

さらに、データ項目(カラム)が無造作に増えていくと、「そのデータが何を意味しているのか」「なぜ登録されているのか」が分からなくなります。普段データベースを触っている人でなければ意味が理解できず、

  • 何の目的で作られた項目なのか
  • 今も使われているデータなのか
  • どの業務・システムで参照されているのか

といったことが不明確になります。こうした状態では、「データはあるが、どう活用すればいいのかわからない」という状況になってしまいます。

これらの問題は、単なる入力ミスや管理不足ではなく、商品データベースの「可用性」の問題と捉えることができます。データは存在しているものの、分析や自動化、改善施策に使える形になっていない。これが、EC事業の業務改善を進めようとしたときに、大きな壁として立ちはだかる原因です。

商品データベースの「可用性」問題

ECの効率化や自動化、業務改善は、多くの場合、業務用アプリやITツールなど、何らかのITシステムを介して実現されます。
そのため、商品データベースもまた、「システムが理解し、処理できる形」で整備されている必要があります。

ところが実際の現場では、「手書きで紙に書くのと同じ感覚で、エクセル等にまとめている」という状態が少なくありません。商品知識のあるスタッフが見れば「何が書いてあるか」は理解できますが、コンピューターがシステム的に処理できる形にはなっていない状態です。これが業務改善を難しくする根本的な原因です。

たとえば、次のようなケースです。

<具体例>
・【キッズ】【フォーマル】ジャンパースカート
・【卒園式におすすめ】吊りスカート

これらはどちらも、人の目で見れば「女の子用のジャンパースカート(吊りスカート)」であり、同じタイプの商品だとすぐに分かります。しかしコンピューターやシステムは、書かれている文字列の「意味」までは解釈しません。そのため、これらを「同種の商品」として自動的に扱うことができません。

このように、「人の目から見れば明らかだが、機械には判別できない」形のデータベースになっていると、自動化や効率化、システム処理に対応できなくなってしまいます。

人が見ればわかるが、システムは処理できないデータの具体例

現場では、次のようなケースもよく見られます。

  • 表記揺れ
    • 「Tシャツ」「Tシャツ」「T‐shirt」「T shirt」
    • 人は同じ商品だと分かるが、システム上は別物になる
  • 見た目は同じだが文字コードが違う記号
    • 全角ハイフン「-」と半角ハイフン「-」
    • 全角スラッシュ「/」と半角スラッシュ「/」
  • 気づきにくい空白や制御文字
    • 商品名の末尾に半角スペースが入っている
    • コピー&ペースト時に混入した見えない文字
  • 機種依存文字・特殊記号
    • 丸囲み数字、特殊な記号、旧字体
    • 環境によって正しく表示・処理されない
  • 自由記述に寄りすぎた項目
    • 用途・対象・特徴がすべて商品名や説明文に混在している
    • 本来は「タグ」「属性」として分けるべき情報が整理されていない

これらはいずれも、人が見れば意味を理解できますが、コンピューターはうまく理解できないので、システム処理や自動化の観点では大きな障害になります。

結果として、

  • 商品SKU単位のデータ分析が正しくできない
  • 商品検索や絞り込みが機能しない
  • 自動処理や一括操作ができない

といった問題につながっていきます。

商品データベースを「仕組み化」する

商品データベースの課題を解決するために重要なのは、個別のデータをきれいにすることではなく、データが自然に整理され続ける「仕組み」を作ることです。

ここでは、現場で特に効果が出やすい考え方をいくつか紹介します。

仕組み化の具体例1:データ項目ごとに「入力ルール」を決める

まず取り組むべきなのは、各データ項目について、

  • 何のための情報なのか
  • どのような形式で入力するのか

を明確にし、誰が見ても同じ意味に解釈できる状態を作ることです。

たとえば「商品説明文」という項目を考えてみましょう。

  • 商品Aの説明文:
    この冬にピッタリなハイネックセーター。ボディラインをすっきり見せつつ、コレ一枚でしっかり温まる断熱素材が特徴です。レディース向け各種サイズを取り揃えています。
  • 商品Bの説明文:
    ガールズブラウス(白)ノーブランド、子供服、キッズ。

どちらも商品の特徴を文章で記載していますが、商品Aは「セールスポイントを文章で伝える説明文」、商品Bは「タグのような単語の羅列」に近い内容になっています。この状態では、新しく商品Cを登録しようとしたときに、「どちらの書き方が正解なのか」が判断できません。また例えば、商品Bの説明文をもとにタグを自動生成しようとすると、商品Aでは同じ処理がうまく機能しない、といった問題も起こります。

こうした混乱を防ぐためには、「どの項目に、どんな情報を、どんな形式で入力するのか」をあらかじめルールとして定めておくことが重要です。

仕組み化の具体例2:商品名の表記方法をルール化する

ECの商品データベースにおいて、「商品名」は特に重要な項目です。商品ページのタイトルにもなるため、アピールポイントや検索ワードを盛り込んで設定されることが多いからです。

たとえば「チェスターコート」という商品であっても、

【特売品】【メンズ】チェスターコート(黒)(カシミア)スーツに似合うコート男性向け

といった商品名を付けることは、決して珍しくありません。しかし、表記方法に規則がないまま運用していると、次のような状態になりがちです。

【特売品】【メンズ】チェスターコート(黒)(カシミア)スーツに似合うコート男性向け
《限定セール》トレンチコート(茶)/レディース/ビジネス/フォーマルコーデ

このように表記の規則がバラバラだと、「セールが終わったので表示を外したい」と思っても、一括で修正することができません。

一方で、商品名の構成ルールをあらかじめ定めておけば、

【限定特価】【メンズ】チェスターコート(黒)/カシミア/スーツに似合う/男性向け
【限定特価】【レディース】トレンチコート(茶)/ビジネス/フォーマル/女性向け

といったように、規則的な商品名を付けることができます。この場合、商品点数が何百点あっても、検索や置換を使って【限定セール】の文字だけを一括で削除・修正することが可能です。

このように、ルール化されているかどうかが、作業効率や自動化の実現性に大きく影響します。

ほかにも様々な「規則化」が、商品データベース改善のカギ

商品データベースの改善方法は、商品名や説明文だけではありません。

  • 商品コードの付け方
  • カテゴリやタグの設計
  • フラグ(Yes/No、0/1 など)の使い方

など、あらゆる項目において共通して重要なのが規則化です。

すべての商品データを同じ法則に従って管理することで、その法則を前提とした一括処理や自動処理が可能になります。

逆に言えば、ルールが存在しない、あるいは守られていないデータベースでは、どんなに優れたシステムやツールを導入しても、本来の効果を発揮することはできません。だからこそ、商品データベース管理が、EC事業の成長のカギになります。

まとめ:商品データベースは、ECのカギを握る心臓部

EC事業を続けていると、「施策を打っているはずなのに、なぜか前に進まない」という状態に直面することがあります。そうした場面で見直すべきポイントは多岐にわたりますが、意外と見落とされがちなのが、今回取り上げた商品データベースの状態です。

商品データベースに潜む課題は、

  • 日常の受発注や在庫管理には支障が出ておらず、業務自体は回っている
  • 現場も今のやり方に慣れてしまい、何が課題なのか見えにくい

といった特徴があるため、問題として認識されにくいという落とし穴があります。

また、長年の現場判断の積み重ねによって、まるで「秘伝のタレ」のように、中身がどうなっているのか誰も正確に把握しておらず、手が付けられない状態になってしまうケースも珍しくありません。

しかし、商品データベースはECの成長のカギを握る、まさに心臓部です。

ここが適切に整っていなければ、

  • 新しいシステムを導入しようとしても思うように進まない
  • 自動化や効率化の施策が、想定以上に難航する

といった形で、成長の壁にぶつかってしまう可能性があります。

「商品ページに表示する情報をまとめるだけのもの」
「仕入れ値や値引きを設定するための画面」

といった表面的な位置づけから一歩進み、商品データベースを活用できるデータ資産として整えることで、ECの自動化や効率化は、現実的なものとして一気に見えてきます。

商品データを資産に変え、自動化と効率化を実現するために

弊社(パークフィールド株式会社)では、ECの商品データ管理に強みを持つ「ネクストエンジン」「ストックビジョン」の導入・活用支援を行っています。

  • 自社の商品データベースを一度整理・再検討したい
  • 現状の課題を洗い出し、改善の方向性を相談したい

といったご相談にも対応しています。

IT導入補助金の活用についてもご案内可能ですので、ご興味がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

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