ECの在庫管理がつらい時、最初に改善すべき3つのポイント

EC事業を続けていると、「在庫管理がつらい……」という瞬間が必ず訪れます。
毎日売れる商品もあれば、急に動きが止まる商品もあります。注文が増えるほど処理は複雑になり、気がつくと 欠品・過剰在庫・発注ミスが次々に発生してしまいます。

とくに中小規模のEC事業者では、
「人手が足りない」
「Excelで何とか回している」
「複数モールの在庫が合わない」
といった状況に直面しやすく、在庫管理は現場の大きな負担になりがちです。

しかし実際には、在庫管理がつらいのは“仕組み”より“運用の形”に原因があることがほとんどです。適切にポイントを押さえて改善すれば、在庫管理は劇的にラクになります。

この記事では、EC在庫管理が苦しくなる原因を整理したうえで、最初に改善すべき3つのポイント をわかりやすく紹介していきます。

目次

なぜECの在庫管理は“つらくなる”のか?よくある原因を整理する

在庫管理の悩みは、単に「忙しいから」「人が少ないから」という理由だけではありません。EC事業特有の 運用構造の“ズレ” が積み重なることで、突然つらくなっていきます。まずは、その代表的な原因を整理しておきます。

複数モール運営で在庫情報が分断される

例えば楽天・Amazon・Yahoo!・自社ECと、複数モールを運営していると、各チャネルで売れた在庫が別々に管理されることが原因で、在庫ズレが発生します。

  • Amazonで売れた分が楽天の在庫に反映されない
  • セールで一気に注文が入り、在庫数が追いつかない
  • あるモールでは「在庫あり」、別のモールでは「在庫切れ」表示

この“分断された在庫”を手作業で調整していると、どれだけ気をつけても誤差は避けられません。

入荷・出荷・返品など、データの更新タイミングがバラバラ

在庫とは、本来動くデータです。各種の情報が常に変動するため、「今、目の前にある情報が、どのタイミングのものなのか」が非常に重要になります。

  • 入荷
  • 出荷
  • 返品
  • 予約注文
  • 倉庫移動

これらが1日の中でバラバラに発生し、それぞれが別のタイミングで記録されると、在庫数が常に“揺れている状態”になります。このタイミングのズレが蓄積すると、気づいた時には「どの在庫数が正しいのか分からない」状態になってしまいます。

手作業・Excel運用が限界を迎えるタイミング

最初は問題なく回っていても、SKU数や注文数が増えるにつれ、Excelでの在庫管理は必ず破綻のタイミングを迎えます。

  • シートが重くなる
  • 関数や複雑なVLOOKUPが壊れる
  • 入力の順番やルールが担当者ごとに違う
  • “更新漏れ”が事故の原因になる

こうした原因により、エクセルでの在庫管理がうまくできなくなったり、管理シートが役に立たなくなってしまうことも珍しくありません。

発注判断が“経験と勘”に依存してしまう

在庫管理でもっとも負荷が大きいのは、実は発注判断です。

  • 「そろそろ切れそう…?」
  • 「去年の同じ時期はよく売れていた気がする」
  • 「セールがあるから多めに入れておこう」

こうした判断は悪いことではありませんが、担当者ごとに 判断基準がバラバラになるため、在庫のブレにつながります。

属人化を放置すると、在庫過多・欠品の両方を招き、結果として在庫管理の“つらさ”を加速させてしまいます。

改善ポイント①:在庫データの「更新タイミング」を決める

在庫ズレの根本原因は、在庫データが“いつ”、誰によって更新されるかが曖昧であることにあります。つまり、「正しい数値が、正しいタイミングで反映されていない」ことが問題の発端です。

日々の業務では、入荷・注文・出荷・返品などの動きがランダムに発生します。そのたびに担当者が個別にデータを更新していると、どうしても “反映の遅れ”や“更新漏れ” が起こり、在庫の整合性が失われていきます。

在庫ズレは“タイミングのズレ”で起きている

在庫管理の事故の多くは、次のような「タイミング差」が原因です。

  • 受注処理が遅れて商品が二重に売れてしまう
  • 入荷データの反映が翌日になる
  • 倉庫側からの在庫数が数日遅れで届く
  • セール時の注文数が想定以上で、反映が追いつかない

データそのものは正しくても、更新のタイミングがズレているだけで、在庫データは簡単に崩れます。

“誰が・いつ・何を更新するか”を決めるだけで安定する

まず取り組むべき改善は、非常にシンプルです。

在庫データの更新ルールを固定化すること

たとえば次のような形です。

  • 受注処理後に必ず在庫を引き当てる
  • 入荷があったら、その日のうちに反映する
  • 倉庫とは1日1回、決まった時間に在庫データを同期する
  • 商品登録時に、初期在庫の反映手順を統一する

「1日に一度だけ決まった時間に更新する」というルールでも構いません。
更新タイミングが揃うだけで、在庫の安定度は劇的に上がります。

複数モール運営では“在庫連携ツール”の導入が効果的

たとえば、楽天・Amazon・Yahoo!・自社ECを同時に運営している場合、手動で在庫数を一致させるのは事実上不可能です。

そこで効果的なのが、

ネクストエンジン(NE)などの在庫連携ツールの活用

です。

NEのようなツールを使えば、

  • どのモールで売れても在庫が自動で連動
  • 在庫引き当ての処理スピードが安定
  • セール時の注文増にもリアルタイムで追従

といった運用が可能になり、在庫ズレが激減します。

改善ポイント②:止まっている商品を“利益の観点”で管理する

在庫管理がつらくなるもう一つの理由は、“売れている商品”と“売れていない商品”が同じ扱いになっていることです。

在庫には「数量」だけでなく、利益貢献度回転速度という重要な軸があります。この視点が抜けると、実際には売れない商品が圧迫し続け、倉庫スペースも資金繰りもどんどん苦しくなっていきます。

在庫は「数量」だけではなく“利益”と“回転率”で見る

売れていない商品が大量に残っている状態は、在庫管理がつらくなる最大の原因です。

  • 利益率が低い商品が棚に残り続ける
  • シーズンが終わった商品が山積みになる
  • 仕入れの判断ミスが気づかれないまま累積する

こうした“止まっている在庫”を把握するには、

「一定期間以上売れていないSKU」を一度すべて洗い出す

「SKUごとの利益率を算出し、表形式でまとめてチェックする」

など、在庫回転率や利益率をSKU単位で“見える化”することが、まず第一歩になります。

利益率が低いのに在庫が多い商品は要注意

止まっている在庫の中には、「持っているだけで損をする商品」があります。

たとえば:

  • 粗利率が低い商品が大量に残っている
  • 回転率が悪く、保管コストがかかる
  • 過去のシーズン商品が残ってしまっている

こうした商品は、棚卸や資金繰りに大きな悪影響を与えます。

廃番候補・セール対象を“ルール化”して決める

在庫が止まる商品を発見したら、“例外処理”ではなく、以下のようにルール化します。

  • 30日売れなければセール対象に
  • 60日動かなければ廃番検討
  • 90日保持しても動かない場合は処分

このような明確なルールがあるだけで、売れ残りの累積が抑えられ、在庫全体が軽くなります。

定番商品は最優先で欠品防止策を

反対に、売れ続ける“定番商品”は、最優先で欠品を避けたい商品です。

  • 過去3か月の平均販売数
  • セール前の需要増
  • モール別の販売数の偏り

などを元に、優先的に発注する枠組みを作りましょう。

改善ポイント③:発注ルールを固定化して“属人化”をなくす

在庫管理の中でもっとも負荷がかかり、
もっともミスが起きやすいのが「発注判断」です。

実際、多くのEC事業者が次のように判断しています。

  • 「そろそろ減ってきた気がする」
  • 「去年はこのくらい売れたから、それに合わせよう」
  • 「セールがあるから少し多めに…」

このように担当者の経験と勘に依存した判断は、一見合理的に見えて、在庫のブレを大きく生む原因になります。

属人化した発注は、在庫管理の最大のリスク

発注が属人化すると、以下の問題が起こりやすくなります。

  • 判断が毎回バラバラになる
  • 多めに仕入れて過剰在庫に
  • 少なめに仕入れて欠品に
  • 引き継ぎができない
  • 経験の浅い担当者が判断しづらい

改善するためには、判断そのものを個人に委ねず、「ルール」で発注できる仕組みが必要です。

発注点・適正在庫の設定は、簡単な計算で決められる

発注をルール化する最もシンプルな方法は、

発注点(在庫が◯個を切ったら発注するライン)を決めること。

過去3か月の売上数と、仕入れリードタイム(納期)が分かれば
適正在庫と発注点は簡単に算出できます。

例:

  • 過去30日の平均販売数=60個
  • 1日あたりの販売数=2個
  • 発注~入荷までのリードタイム=10日
    → 発注点は「20個」が目安

このように 数字で判断する仕組みを作ることで、経験や勘に頼らない安定した運用が可能になります。

サイクル発注で“判断する回数”を減らす

毎日売れ行きを見ながら発注を考えていると、
担当者の負荷が非常に大きくなります。

そこでおすすめなのが、

毎週・毎月、決まった日に発注する「サイクル発注」方式

です。

  • 毎週月曜日に発注する
  • 月末に翌月分をまとめて発注する
  • セール前だけ例外ルールを設定する

こうした仕組み化により、判断の回数そのものを減らせるため、担当者の負担が軽くなります。

まとめ:在庫管理は仕組み化すれば驚くほど軽くなる

在庫管理がつらくなる理由は、決して“担当者の力量”や“努力不足”ではありません。EC事業は、入荷・出荷・返品・モール間連携など、在庫が絶えず動く業態です。だからこそ、手作業や属人的な判断では限界がきます。

今回紹介した3つの改善ポイント、

  1. 在庫データの更新タイミングを固定する
  2. 止まっている商品を利益の観点で管理する
  3. 発注ルールを決めて属人化をなくす

これらはすべて「現場の負担を減らし、管理を仕組みに委ねる」ためのものです。

そして実際、多くのEC事業者がこの3つを徹底するだけで、在庫管理のストレスが驚くほど軽くなります。

少人数ECチームほど“仕組み化”の効果が大きい

中小ECは、担当者が複数業務を兼任するのが一般的です。
そのため、在庫管理に割ける時間はどうしても限られます。

だからこそ、少人数チームほど仕組み化が強い味方になります。

  • 判断の迷いがなくなる
  • 情報がズレず、共有が簡単になる
  • 引き継ぎがスムーズ
  • 倉庫やモール側との連携ミスが減る
  • 発注業務にかける時間が劇的に減る

在庫管理が安定すると、販売計画や販促施策など「売上につながる業務」に集中できるようになります。

分析ツール・在庫連携ツールが「次の成長ステップ」を後押しする

今回ご紹介した「3つの改善」を実務レベルに落とすこむために必要なのは、ECのデータ管理システムです。

  • 商品別の回転率や粗利の可視化
  • セールの影響をリアルタイムで把握
  • 在庫切れを防ぐための詳細分析

これらは、手作業ではどうしても限界があります。そのため、分析・在庫管理ツールや、モール連携ツールの導入が“次の効率化ステップ”につながります。ツールを活用することで、在庫管理の精度とスピードは格段に向上し、販売計画に基づいた安定した運用が可能になります。

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