IT導入補助金の効果報告とは?実績報告との違いややり方を徹底解説
この記事では、IT導入補助金の「効果報告」についてご説明します。
この「効果報告」は、「実績報告」とは異なる手続きです。
IT導入補助金の審査に通り、無事にITツールを導入し、「実績報告」も終えて補助金を受け取り、「これで終わり」と思って「効果報告」を忘れてしまう―――。そんなトラブルも珍しくありません。
報告を忘れていると、最悪の場合、補助金の返還を求められるなどのリスクもあり得ます。重要なトピックスのため、IT導入補助金を申請した方は、ぜひお読み下さい。
IT導入補助金の効果報告とは
IT導入補助金の効果報告とは、補助金を活用して導入したITツールが、実際にどのような経営効果を生んだのかを報告する手続きです。
例えば、
- 導入前後で売上や人件費にどのような変化があったか
- ITツールを今も活用しているか
- 賃上げ目標を達成できたか
といった内容を国に提出します。
これは「IT導入補助金が経営改善に役立ったか」を確認するための制度です。
実績報告と効果報告の違い
効果報告は「実績報告」と混同されがちですが、目的もタイミングも異なります。
実績報告 | 効果報告 | |
---|---|---|
目的 | ITツールを導入した証拠を提出する | 導入後の経営効果を確認する |
提出時期 | ツール導入完了後すぐ | 導入後1年~複数年にわたり提出 |
提出回数 | 1回のみ | 1~3年にわたり複数回の提出が必要 |
【申請年度別】IT導入補助金の効果報告のスケジュール
2023年度以降のIT導入補助金について、効果報告のスケジュールを整理しました。
2023年度に申請した場合の効果報告
2023年度にIT導入補助金を申請した企業は、申請年度の翌年度(2024年度)が「1年度目」としてカウントされます。
そのため、以下のスケジュールで効果報告を行う必要があります。
枠の種類 | 報告スケジュール |
---|---|
通常枠(A・B類型) | 1年度目:2024年度 → 報告は2025年春頃 2年度目:2025年度 → 報告は2026年春頃 3年度目:2026年度 → 報告は2027年春頃 |
セキュリティ対策推進枠 | 3年度目(2026年度)のみ → 報告は2027年春頃 |
デジタル化基盤導入枠・インボイス対応類型 | 原則1年度目(2024年度)のみ → 報告は2025年春頃※賃上げ加点を受けた場合は3年度目(2026年度)にも追加報告が必要 |
2024年度に申請した場合の効果報告
2024年度に申請した場合は、翌年度の2025年度が「1年度目」となります。
枠の種類 | 報告スケジュール |
---|---|
通常枠(A・B類型) | 1年度目:2025年度 → 報告は2026年春頃 2年度目:2026年度 → 報告は2027年春頃 3年度目:2027年度 → 報告は2028年春頃 |
セキュリティ対策推進枠 | 3年度目(2027年度)のみ → 報告は2028年春頃 |
デジタル化基盤導入枠・インボイス対応類型 | 原則1年度目(2025年度)のみ → 報告は2026年春頃※賃上げ加点を受けた場合は3年度目(2027年度)にも追加報告 |
2025年度に申請した場合の効果報告
2025年度に申請した場合は、翌年度の2026年度が「1年度目」となります。
枠の種類 | 報告スケジュール |
---|---|
通常枠(A・B類型) | 1年度目:2026年度 → 報告は2027年春頃 2年度目:2027年度 → 報告は2028年春頃 3年度目:2028年度 → 報告は2029年春頃 |
セキュリティ対策推進枠 | 3年度目(2028年度)のみ → 報告は2029年春頃 |
デジタル化基盤導入枠・インボイス対応類型 | 原則1年度目(2026年度)のみ → 報告は2027年春頃※賃上げ加点を受けた場合は3年度目(2028年度)にも追加報告 |
IT導入補助金の効果報告の提出の流れ
IT導入補助金の効果報告は、導入したITツールが経営改善にどのように役立ったかを国に伝えるための重要な手続きです。提出は補助を受けた事業者が行いますが、内容確認のためにIT導入支援事業者との連携も必要になります。
効果報告の基本的な流れ
効果報告は、以下の流れで進めます。
- 申請マイページにログイン
補助事業者は「申請マイページ」にログインし、効果報告の項目から実績データを入力します。 - IT導入支援事業者の確認
入力した内容は、支援事業者が「IT事業者ポータル」で確認します。必要に応じて修正の依頼が入る場合があります。 - 事務局への提出・審査
内容に問題がなければ、補助事業者が事務局へ提出。事務局による審査を経て完了します。
効果報告の内容
IT導入補助金の効果報告は、申請した枠によって報告内容や回数が異なります。ご自身がどの枠で申請したかによって、必要な情報や提出回数が変わるので注意が必要です。
以下の表で、枠ごとの違いを整理しました。
申請枠 | 提出回数 | 主な報告内容 |
---|---|---|
通常枠A類型 | 年1回 × 3年度 | 営業利益・人件費・減価償却費・従業員数・平均労働時間・給与支給総額・事業場内最低賃金など |
通常枠B類型 | 年1回 × 3年度 | 上記に加え、賃上げ要件達成の確認(未達の場合は補助金返還の可能性あり) |
デジタル化基盤導入枠 | 1年度目のみ | ITツールの活用状況・インボイス対応の状況 |
セキュリティ対策推進枠 | 3年度目に1回のみ | 営業利益・人件費・従業員数・平均労働時間・給与支給総額に加え、セキュリティ対策実施状況 の確認 |
✅ 通常枠(A・B類型)は3年間にわたり毎年報告が必要です。特にB類型は賃上げ目標の達成確認があり、未達の場合は補助金の一部または全額返還を求められることがあります。
✅ デジタル化基盤導入枠は原則1年度目のみの報告で、主にツール活用状況やインボイス対応について記載します。
✅ セキュリティ対策推進枠では3年度目に1度だけ報告が必要で、ITツールの活用状況とともにセキュリティ対策についても確認されます。
効果報告の具体的な内容と作成のポイント
効果報告では、補助金を活用して導入したITツールがどのような成果を生んだかを、具体的な数値や状況で報告します。内容は申請枠によって一部異なりますが、以下のような項目が中心です。
効果報告で入力する主な項目
✅ 売上やコストに関する数値
- 営業利益(決算書に基づく数値)
- 人件費(給与・賞与・旅費交通費の合算)
- 減価償却費
- 年間の平均労働時間(従業員ごとの平均)
✅ 従業員や賃金に関する項目
- 従業員数(労働者名簿などで確認)
- 給与支給総額
- 事業場内最低賃金(効果報告時点での直近月の実績値)
✅ ITツール活用・対応状況
- ITツールを継続利用しているか
- インボイス制度対応の状況(デジタル化基盤導入枠のみ)
- セキュリティ対策の実施状況(セキュリティ対策推進枠のみ)
作成時のポイント
📝 1. 根拠資料を準備する
- 効果報告では、損益計算書や賃金台帳などの証拠資料に基づいて数値を入力する必要があります。
- 万が一、事務局から確認が入った際は、これらの資料を提出できるように準備しておきましょう。
📝 2. 虚偽報告は厳禁
- 虚偽の数値や内容を記載すると、補助金の返還や今後の申請に影響が出る可能性があります。
- 実態に即した正確なデータを記載しましょう。
📝 3. IT導入支援事業者と密に連携
- 効果報告は支援事業者の確認を経て提出されます。
- 入力内容で不明点があれば、支援事業者に相談するのが確実です。
【参考】計画未達の場合の対応
- 計画していた目標数値に届かなかった場合も、正直に実績を入力します。
- 計画未達のペナルティ等はありませんので、正確な数値を入力しましょう。
【参考】後年手続き(辞退届の提出)について
導入したITツールを解約・利用停止した場合には、後年手続きにて辞退届けを提出する必要があります。
ITツールを複数導入し、その一部の解約であっても、実施している補助事業の辞退とみなされます。
また、廃業や倒産、事業廃止など補助事業を取りやめた場合にも辞退返還が必要となった場合、届けの提出が必要です。
辞退となる場合、交付された補助金の一部または全ての返還が必要になる場合があります。
まとめ:IT導入補助金の効果報告を忘れずに!
IT導入補助金の効果報告は、導入したITツールが経営改善にどのように役立ったかを国に伝える重要な手続きです。
- 実績報告との違いを押さえ、提出タイミングと流れを理解することが大切です。
- 報告内容や回数は、申請した年度や枠によって異なるため、必ずご自身の申請内容を確認してください。
- 正確なデータ入力のために、損益計算書・賃金台帳などの根拠資料を事前に準備しましょう。
また、提出が遅れたり、内容に不備があると補助金返還のリスクもあります。一方で、計画未達の場合も、正直に報告すれば特にペナルティ等はありません。早めに支援事業者と相談し、スムーズな報告を目指しましょう。