【申請方法と条件】東京都の補助金「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業」とは?
東京都内で事業を営む中小企業・個人事業主の方にとって、事業の見直しや体制強化を進めるうえで頼れる制度の一つが、「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業」です。
この補助金は、一般コースで最大800万円、アシストコースで最大200万円という高額の支援が受けられることから、例年非常に高い注目を集めています。対象となるのは、東京都内に本社または事業所を有する中小企業や個人事業主です。都が主導する制度のなかでも、特に実効性のある支援策として、多くの事業者から注目されています。
本記事では、この補助金制度の仕組みや申請のポイントをわかりやすく解説するとともに、実際に申請を行った体験をもとに、審査で気をつけたい点についてもご紹介します。補助金の活用を検討している方にとって、申請前に知っておきたいポイントをお伝えしていきます。
この補助金はどういう制度?「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業」の概要
「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業」は、東京都が中小企業の持続的な経営を支援するために実施している補助金制度です。コロナ禍や物価高、人手不足、デジタル化の遅れなど、急速に変化する事業環境に対応するため、既存事業の「深化」や「発展」を図る取り組みに対して補助が行われます。
対象者
東京都内に本社または事業所を有する中小企業者、個人事業主、または中小企業団体が対象です。
※「東京都内での事業活動」が明確であることが条件となります。
補助金額と補助率(一般コースとアシストコース)
本制度には2つのコースが用意されています。
コース | 補助上限額 | 補助率 | 特徴 |
---|---|---|---|
一般コース | 最大800万円 | 2/3以内 | 比較的大規模な取組に対応 |
アシストコース | 最大200万円 | 4/5以内 | 小規模で早期に実施可能な取組向け |
アシストコースは、より簡便な手続きで取り組めるため、初めて補助金申請に挑戦する方にも適した設計となっています。一方、一般コースは高額な補助が期待できる分、申請内容や審査の精度も高い基準が求められます。
「深化」と「発展」とは?「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業」のポイント
「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業」で最も重要なキーワードが、「深化」と「発展」です。補助金の対象となるのは、新たにゼロから始める事業ではなく、既存の事業活動をもとにした取り組みである点に注意が必要です。
「深化」とは?
「深化」とは、すでに自社で取り組んでいる事業を、さらに強化・洗練・効率化するような取組を指します。
- 既存の商品やサービスの品質向上
- 生産や業務プロセスの改善・IT化
- 顧客満足度やサービス体験の向上を目的とした体制整備 など
つまり、「今やっていることを、より良くする」ことが「深化」です。
「発展」とは?
一方、「発展」は、既存事業の延長線上で新たな市場やサービス展開に乗り出す取組を指します。
- 現在提供しているサービスを法人向けにも展開
- これまで対面のみだった販売チャネルに、オンライン販売を追加
- 国内展開していた商品を海外市場へ広げる準備をする など
「発展」は、“まったくの新規事業”ではないが、「これまでの事業内容を踏まえた新しい挑戦」が求められます。
「新規事業」は対象にならない
制度名に「経営基盤強化」とあることから、「新たな事業を立ち上げる取り組みも補助されるのでは」と誤解されがちですが、完全な新規事業(既存事業との関連性が乏しいもの)は原則として補助対象外です。
申請書類や面接審査では、「その取組がなぜ自社に必要なのか」「これまでの事業とどう関係しているのか」という点が重視されます。「既存事業とのつながり」が論理的に説明されていないと、採択に至らない可能性があります。
一般コースとアシストコースの違い
「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業」では、補助対象となる事業の規模や実施体制に応じて、一般コースとアシストコースの2つの選択肢が設けられています。
それぞれの特徴を整理すると、以下のとおりです。
◆ 一般コース
- 補助上限額:最大800万円(補助率2/3以内)
- 比較的規模の大きな取組や、複数年にわたる取り組みも想定可能
- 採択された場合のインパクトが大きい一方、申請書の精度や審査の厳しさも高い水準が求められます
- 事業実施にあたり、社内体制や資金繰りの見通しも重視される傾向があります
◆ アシストコース
- 補助上限額:最大200万円(補助率4/5以内)
- 小規模かつ短期間で実施可能な取り組みに対応
- 申請書類や事業計画の負担が比較的軽く、初めて補助金を活用する事業者にも向いている
- 採択後も実施まで比較的進めやすいというメリットがあります
どちらを選ぶべきか?
補助額の大きさだけで判断するのではなく、自社の事業規模や体制、そして実現したい内容のスケール感に合わせてコースを選ぶことが重要です。
- 新たな設備導入や本格的な販路拡大などを計画している場合は一般コース
- まずは業務の一部を効率化したい、小さな実験的な施策を試したい場合はアシストコース
といった具合に、無理のないスケジュール・予算で実行できるかどうかを一つの判断基準にするとよいでしょう。
二次審査は面接も!審査の流れと準備すべきこと
「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業」では、申請から採択までに2段階の審査があります。補助金制度の中でも比較的しっかりと審査が行われる仕組みになっており、採択されるためには十分な準備が必要です。
一次審査(書類審査)
まず最初に行われるのが、申請書類に基づく書類審査です。提出された申請内容が制度の趣旨に合っているか、事業の実現可能性や波及効果があるかどうかなどがチェックされます。
この段階では、「形式が整っているか」だけでなく、事業の背景や課題、取り組みの必要性・効果などがロジカルに説明されているかが重要です。
書類の不備や内容の薄さがあれば、この時点で不採択となる可能性があります。
二次審査(面接審査)
一次審査を通過した申請者には、面接審査(ヒアリング)が行われます。この面接では、提出した書類の内容に基づいて、担当者が事業の中身や実現性、申請者の理解度などを直接確認します。
形式的な審査ではなく、一次審査で通っても二次審査で落ちてしまうこともあります。面接時間は限られているため、要点を整理し、説得力のある説明ができるように準備することが大切です。
面接対策で意識したいこと
- 申請書と齟齬のない説明をする(矛盾があると不信感につながる)
- 想定質問への準備をしておく(FAQのような形式で対策すると効果的)
- 第三者に伝わる表現かどうかを意識する(自社特有の言い回しは避ける)
面接審査を通じて、事業への理解や実行力、そして本気度が問われるため、軽視せず本番に向けた練習や準備を行うことが採択のカギとなります。
「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業」に実際に申請して感じた審査のポイント
他の補助金も同様ですが、一般的に、補助金の審査基準は公開されていません。「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業」も、制度としての枠組みや要件は公式に明文化されている一方で、実際に審査でどのような点が重視されるかはブラックボックスの部分も少なくありません。
ここでは、実際に弊社が申請を行った経験を踏まえて、審査の際に「おそらくここが見られているのではないか」と感じたポイントを紹介します。あくまで一例ではありますが、申請を検討している方の参考になれば幸いです。
1. 「すでにやっているのでは?」と思われるリスクに注意
弊社が申請した事業内容は、既存事業の延長線上にある「発展型」の取り組みでした。ただ、社内ブログで過去にそのサービスについて紹介していたことから、「すでに事業化しているのではないか」と見なされた可能性があると感じています。
補助金制度では「これから実施する取組」であることが前提とされているため、社外向けにすでに情報発信をしている場合、申請内容との整合性に注意が必要です。たとえば以下のような点はあらかじめ確認・調整しておくことをおすすめします。
- 申請内容と自社サイト・SNS等の記載内容が一致しているか
- 実施前の事業について、先行して発信していないか?
もしも先行してブログやSNS等で事業内容を発信してしまっていた場合は、掲載を取り下げるなど、予め対応を行っておきましょう。
2. 一次審査に通っても、二次審査で落ちることはある
補助金申請の中には「書類が通ればほぼ採択」という制度もありますが、この制度では一次審査(書類通過)後に二次審査(面接)で不採択となるケースが実際にあります。
面接の準備不足が採択結果に直結することもあるため、一次通過後も気を抜かない姿勢が大切です。
3. 面接では「伝える力」も問われる
書類にしっかり書いてあるから大丈夫、と思いがちですが、面接は“口頭での説得力”が試される場です。話し慣れていない方や、緊張しやすい方は、事前に以下のような準備をしておくと安心です。
- 想定される質問をリストアップして回答を整理
- 要点を簡潔に伝えるプレゼン練習
- 対象外経費や制度の趣旨に反しない内容か再確認
採択・不採択の理由は公開されませんが、少なくとも「この会社が実行するなら信頼できそうだ」と思ってもらえるかどうかは大きな差になるでしょう。
まとめ:「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業」を活用するために
「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業」は、東京都内の中小企業や個人事業主が既存事業を強化・発展させるために活用できる、非常に有効な補助金制度です。一般コースでは最大800万円、アシストコースでも最大200万円という手厚い支援が受けられる点は、他の補助制度と比較しても魅力的と言えるでしょう。
その一方で、人気の高い補助金のため、申し込みも多く、採択のハードルは決して低くはありません。申請内容の完成度や準備の丁寧さが審査結果に大きく影響します。特に、以下のポイントを意識しておくことが重要です。
- 「既存事業の深化・発展」であることが論理的に説明できるか
- 申請書と自社の公開情報に矛盾がないか
- 面接審査に向けた準備ができているか
これらの点を押さえて、しっかりと準備を進めれば、制度の趣旨に沿った取り組みとして評価され、採択に近づくはずです。
補助金申請は決して簡単ではありませんが、自社の事業を見直し、将来に向けた戦略を整理する良い機会にもなります。本記事の内容が、申請を検討している方々の一助となれば幸いです。
弊社パークフィールドの「補助金申請サポート」もご活用下さい
弊社では、豊富な補助金活用や活用支援の経験を活かし、「補助金申請サポート」サービスをご提供しています。「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業」の申請もサポート対象です。弊社が実際にこの補助金に申請した経験も活かし、皆様の補助金申請をサポートいたします。
ご興味をお持ちいただけましたら、まずは以下の特設サイトをぜひご覧ください。
