ECの集客は「アクセス数」を追うと失敗する。CPA・LTV・ROASを実務目線で見る

EC集客というと、「とにかくたくさんの人を集めよう」と考えてしまいがちです。しかし、この発想には落とし穴があります。
今回の記事では、「集客に力を入れよう」という、多くのEC事業者が持つ当たり前の課題意識に潜む「落とし穴」と、その対策についてご案内します。
数×質の方程式で考えるECの売上構造
ECの売上は、大まかに「アクセス数×コンバージョン率」という式で捉えることができます。コンバージョン率が1%であれば、1000人のアクセスがあっても購入は10件にとどまります。一方、コンバージョン率が10%であれば、同じ1000人のアクセスから100件の購入が見込めます。
つまり、アクセス数という「数」だけでなく、そのアクセスがどれだけ購入につながりやすいかという「質」を合わせて見なければ、売上の実態は把握できません。自社の商品に興味のない人をどれだけ集めても、コンバージョン率は上がらないためです。
CPA(顧客獲得単価)で見えてくる「安く集めたはずが実は高くついている」ケース
アクセス数だけを追う危険性を、より具体的な数字で見ていきましょう。ここで登場するのが、1件の顧客を獲得するためにかかったコストを示すCPA(顧客獲得単価)という指標です。
100人中50人が買うショップ/1万人中50人しか買わないショップの試算比較
1アクセスあたりのコストが500円かかると仮定して、2つのケースを比較してみます。
1つ目は、100人のアクセスがあり、そのうち50人が購入するケースです。この場合、かかったコストは500円×100人で5万円、購入者数は50人ですから、CPAは1000円になります。
2つ目は、1万人のアクセスがあるものの、購入者は同じく50人にとどまるケースです。この場合、コストは500円×1万人で500万円、購入者数は変わらず50人ですから、CPAは10万円にまで跳ね上がります。
アクセス数だけを見れば2つ目の方が圧倒的に多いにもかかわらず、実際の顧客獲得コストは100倍にまで膨れ上がってしまうのです。1件の売上を立てるために10万円ものコストがかかっていては、事業として成り立たせることは困難になります。
リピート率まで見て初めて分かる「顧客の質」の差
CPAだけでなく、その後のリピート率まで含めて見ることで、集客の質の違いはさらにはっきりと表れてきます。
同じアクセス数・購入数でも収益構造が変わる実例
先ほどと同様に、2つのケースで考えてみましょう。1つ目は、集客100人、購入50人のうち20人がリピーターになったケースです。この場合、集客100人に対して合計70件の売上が立つ計算になります。
2つ目は、集客1万人、購入50人のうち、リピーターになったのはわずか2人だったケースです。この場合、集客1万人に対して売上はたったの52件にとどまります。仮に複数点の購入があったとしても、これだけの集客コストをかけて損益分岐点を超えるのは容易ではありません。
アクセス数だけを見れば後者の方が多く見えますが、収益構造としては明らかに前者の方が優れています。良質な顧客をどれだけ集められているかが、事業の健全性を大きく左右するということです。
現場でこれらの指標をどう運用に落とし込むか
指標の意味を理解したうえで、実際の運用にどう活かしていくかが重要です。ここでは、日々のEC運営の中で意識したい3つの観点を紹介します。
集客チャネルを見直すタイミングの判断基準
あるチャネルからのアクセス数が増えていても、購入やリピートにつながっていなければ、そのチャネルの質を見直すサインです。数字上の伸びだけで判断せず、購入率やリピート率まで含めて定期的に確認する習慣を持つとよいでしょう。
広告予算配分の考え方
限られた予算は、アクセス数を稼げるチャネルではなく、購入やリピートにつながりやすいチャネルに配分することが基本です。自社の商品を本当に必要としている層にリーチできているかどうかを、常に意識しておく必要があります。
ROASとの違い(売上ベースではなく利益・LTVで見る視点)
広告の成果を測る指標としては、広告費に対する売上の割合を示すROASもよく使われます。ただしROASは売上ベースの指標であるため、粗利益や返品、リピートの有無までは反映されません。目先の売上だけでなく、顧客生涯価値(LTV)まで含めて広告の効果を判断することで、より実態に即した集客の評価ができるようになります。
まとめ
EC集客において、アクセス数の多さは必ずしも成果の良さを意味しません。CPAという指標を使って具体的に試算してみると、アクセス数だけを追う集客が、いかに収益構造を悪化させるリスクを持っているかが見えてきます。
さらにリピート率まで含めて見ることで、良質な顧客をどれだけ集められているかが、事業の健全性を左右することも分かります。弊社では、日々の集客施策を評価する際には、アクセス数という表面的な数字だけでなく、CPAやリピート率、LTVといった指標を組み合わせて、実務の判断に活かしていくことが重要だと考えています。

